2009.06.23 Tuesday
盆栽、コミューン、情念
私はこの知らない町に引っ越してきたばかりである。そこは工場と団地の広がる丘陵地帯だ。商店街を抜けたところにある私のアパートは狭いが、何故かベランダだけは洋館のバルコニーの様に広くて優雅だ。私はそこに所狭しと盆栽を並べ、悦に入る。
近所に女性アーティストのグループが大きなアトリエを構え、コミューンさながらに自給生活を送っていると聞き、さっそく訪ねてみる。
踏切を渡ると、牧歌的な田園風景に変わり、田んぼの真ん中に彼女たちのアトリエは慎ましくあった。
ちょうどテレビ局のクルーが取材している最中であった。それによると、どうやら彼女たちのリーダーはテレビでタレントとして活躍していて、ここでは主に彼女のグッズを製造、販売して生計を立てているという。私は少しがっかりしてしまった。一応、彼女たちはみな、映像系インスタレーションの作家らしいのだが。
そうこうしていると、イケテる白人男性が数人、ぞろぞろとやって来た。途端に彼女たちの顔にイヤらしい笑みが浮かぶ。妖怪の様な情念を垣間見てしまった気がして、私はその場を後にする。
もと来た道を戻るのだが、踏切が見当たらない。仕方なく左右を確認し、線路を横断していると、かすめるように列車が通過する。全く気付かなかった。運転席から車掌が仄暗い眼差しをこちらに向けているのが見える。乗客もまた暗い車内から眼だけを光らせている。
なんとか線路を渡りきるのだが、もはや私は自分が何処に居るのかわからない。確かに工場と団地の広がる丘陵地帯には違いないが、先程とは別の町としか思えない。商店街もあり、アパートもあるのだが、やはりまるで違うのだった…
「テキーラ テ キエロ」展も無事終了し、ニ週間後にはリトアニアで展示です。一週間滞在します。
その後ようやく夏休み(そんなものあるのか?)。
今日は暑くなるみたいですね。
頑張りましょう。
岩熊力也
2009.06.08 Monday
丘の上、世界の終わり、黄金の羽根
私たちは丘の上を目指して、恐ろしく長い階段(エスカレーター?)を登っていた。私たちは展覧会の準備の為に、見知らぬ海外の地まで来た芸術家である。ざっと十五人位いる。階段は天国まで続くのではないかという程に果てしない。
ようやく丘の上まで登りつめると、其処にはパリの凱旋門を想わせる巨大な門があった。木造である。門をくぐると、落雷により立ち枯れた巨木が陽を受けて白銀の光を放っている。
門の中は教会の敷地らしい。おびただしい数の信者が口々に呪文を唱え、地響きとなって空気を揺らす。それらに混じって私の作品を批判する批評家の声まで聞こえる。
正面には門に比べ質素なやはり木造のカテドラルがあり、神父が表に出て、世界の終末を告げている。私たちは隅のほうでこの様子を見ていた。空気は不穏だった。
俄かに空模様が怪しくなったと思ったら、あっという間に土砂降りに。教会の中に駆け込む信者達。私たち(いつの間にか三人に)も後に続く。
中はむんとする熱気。知らぬ間に私は一人の女を廻って恋の争いを繰り広げている。彼女の気をひこうとウイットに富んだスピーキングを繰り出すのだが、どっちつかずの反応にやきもきする。
窓から光がさしこむ。外を見ると雲一つ無い青空が戻っている。遠くには雪をのせた山々の連なり。そして、その向こうから黒い塊が陽炎の様に揺れながら此方に向かって来るのが目に入る。信者の一人も異変に気づいて、声にならない声をあげる。教会内にどよめきが広がる。
次第に塊の正体が明らかになる。巨大な黄金の鳥の群れであった。そして、それは信者達にとって世界の終わりを意味していた。
教会内にヒステリーの様な呪文がこだまする。
そして、いよいよ鳥の群れが教会の上までやって来ると、激しい震動と共にぼろぼろと屋根が崩れはじめ、瓦礫が私たちを襲う。地面に伏せる人々。やがて屋根に空いた穴から無数の黄金の羽根が静かに私たちの上に降り注いだ…
昨夜はギャラリー ニモードにて展示。今年のテキーラ展は十五人。展示が大変そうだなと思っていたが、さすがは皆さんプロフェッショナル、テキパキと素晴らしい空間が出来上がりました。
明日オープニングパーティーです。
「テキーラ テ キエロ 〜アートに恋して〜」
6月9日(火)〜6月21日(日)
12:00〜19:00(最終日17:00)
15日休廊
初日オープニングレセプション18:00-20:00
岩熊力也
2009.05.05 Tuesday
怪獣、五人の花嫁、ダビデ
中世ヨーロッパ風の街並み、そのメインストリートの奥から一匹の怪獣がゆっくりと歩いてくる。ウルトラマンに出てくるような二本足で歩く怪獣だ。
今日はその怪獣に人間の娘五人が嫁入りするらしい。今まさに儀式が行われようとしていた。
城のテラスの様な所に五人の娘は集められ、真っ白なドレスを身につけ、皆一様に嬉しそうに笑っている。その他五人の男も真っ白な礼服を身にまとい並んでいる。彼らは何だろうか。
やがてファンファーレが鳴り響き、五人の花嫁と五人の男たちは怪獣の待つ広場へと進んでいった。
知らないあいだに街中の建物という建物が真っ白に塗装されている。そして人々もまた皆真っ白である。私だけが色のついたチェック柄の服を着ている。
さすがに気まずさを感じ、人々の群れから離れ、街の境界だろうか、高い塀がめぐらされている処まで行く。扉が一つあったので街の外へと出てみると、風景は一変する。薄汚れた街並みに木枯らしが吹きわたっている。浮浪者風の若者が道端でごろごろしている。振り返れば、扉の向こうに真っ白な街並みが輝いているのだ。
このコントラストは写真に収めなければと、カメラを構える。しかし、どこにカメラを向けても何故かファインダーのなかに真っ白いダビデ像の巨大な頭部が前面に現れ、被写体の邪魔をする。実際の風景の中にはダビデ像などどこにも無いのだが、カメラを向けると現れる。心なしかニヤニヤしている様に見える。何なのだ、ダビデ!
私は写真撮影をあきらめる。精神的にひどく疲れてしまった。ダビデ…
遊工房での個展も終了。
観にきてくれた皆様、どうも有難うございます。
私は昨日から木曽に来てます。嫁の実家でバイトです。
私は渓流釣りをする人なのですが、ここの川の水もまた年々汚れていっています。十年前はきれいだったのに残念です。
環境保護といわれて随分たつのですが、結局変わらないのですね。
なんとかしたいものです。
岩熊力也
2009.04.30 Thursday
水の中、餓鬼ども、箪笥
妻とその友人の三人でプラットフォームにいたのだが、電車に乗り込んだのは私一人であったようだ。その事に気づくのが少し遅れた。
引き返して彼女たちを探すと、大きな渓流の向こう岸でテントを張ってバーベキューをしている二人が見える。
橋が見当たらず、私は泳いで向こうに渡る事に。
川は透明度が高く、水量がたっぷりあるが、穏やかな淵をなしている。
私は飛び込む。
水面上からは全く分からなかったのだが、水の中にはうじゃうじゃ子供たちが泳いでいる。しかも、底の方から沸き上がるように次々と浮上してきて私に絡みつく。うひゃひゃ。
絡みつく餓鬼どもをふりほどきながら、潜水を続けるうちに、どうやら私は激流に飲まれてしまったようだ。
あっぷあっぷと水面に顔をあげながらバタバタしていると、後ろから巨大な年代物の箪笥が流れてきた。その箪笥に必死でしがみつく県知事と副知事の姿があった。よく分からないが、そのパフォーマンスを見せることで支持率のアップを期待しているらしい。県民の為にもその箪笥を激流から救い出さねばならんらしい。しかし、その思惑とは裏腹に、箪笥もろとも物凄い勢いで私を追い越し、流れていってしまった。
流れも落ち着いたので、上流に向かって泳いでみると、以外や以外、スイスイと元の場所に戻ることができた。
妻たちは何やら楽しそうに子供たちと遊んでいる。しかし、水中では子供たちに代わって今度はおびただしい数の魚が浮上してきて私に絡みつく。
妻たちは楽しそうにバーベキューをしている。私はなかなか陸にあがることが出来ない…
昨夜は遊工房にレジデンスで来ている、フィンランドのサーラさんとトームさんのサヨナラパーティーに参加。人なつっこい笑顔で再会を誓う。
私はといえば、7月にリトアニアで行われる日本-リトアニア交流展に参加することに。
7月までにインフルエンザ騒動が終息していればいいのだが、微妙だなぁ。
岩熊力也
2009.04.09 Thursday
定食屋、森林火災、人形に魂
私と友人はパーキングに車を停めると、一軒の定食屋に入った。
山あいの道を深く分け行った処にあるのだが、店内は込み合っていた。
カウンターに腰掛け、料理を注文し、窓越しに迫りくる山岳風景を楽しんだ。山頂付近から煙が立ち昇っているのが見える。活火山だろうか。
やがて、料理が運ばれ、食事を楽しむ。
再び窓の外に目をやると、そこには急速に延焼をつづける森林火災の光景が広がっていた。
店内の誰一人気づいていないのだろうか、皆静かに食事をつづけている。
私は友人に、早く逃げたほうがいい、と促すが、食事が終わってからにしよう、と呑気な友人。
しかし、火の手はすぐそこまで迫っている。
隣にいた中国人風の客が、茶碗をよこせ、と意味不明な要求を私に対してしている。何なのだこの人たちは。
私は無理矢理友人を引きずり、店の外に出る。
ああ、熱い。もはや四方は火の海である。
私たちは車に戻り、炎の中を突破することにした。
案外、あっけなく脱出できる。
私は友人と別れ、実家に戻る。実家はイタリア・フィレンツェのアパートの最上階のような処。窓からは穏やかな陽光が差し込んでいる。リビングでは親戚が一堂に集まって、厳かにランチを召し上がっている。皆よそよそしい。そして、動きもぎこちない。人形に魂を吹き込んだ感じである。
私は余興とばかりに空中宙返りをしてみせる。すると、母がその人形のような目をこちらに向け、危ないことは止めなさい、と小さな声を出した…
最近、家庭菜園をはじめている。
トマト、キャベツ、ホウレンソウ、ダイコン、ニンジン等を種から育てている。
今のところ順調であるが、ハラペーニョがなかなか芽を出さない。
これが芽吹いてくれないと、我が家の夏の食卓が彩らない。
頑張れ。
岩熊力也
2009.04.08 Wednesday
エレベーター、幽霊、一石二鳥
近頃、首都圏のエレベーター内で幽霊の出現が相次いでいる。しかも、おせっかいな幽霊が多く、付きまとわれた人は心底疲れきってしまうらしい。
今も友人のMが銀座のエレベーターで、ずっと野球の話をしてくる幽霊に出くわした、と私の処へとやってきた。
なんとかしなくちゃならん。
とりあえず私たちは幽霊対策の会社を立ち上げることにした。ついでにボロ儲けできないものか。
早速、調査の為にスタッフをひきつれ銀座のエレベーターへ向かう。
突然でかい声をあげながらおじさんの幽霊が現れ、女スタッフにからみはじめた。
とりあえず、私は幽霊たちの発する言葉を書きとめて、詩集でも出版しようかしら、と考える。その詩に曲をつけてCDにすれば儲かるかしら、と考える。それで幽霊たちの想いもはらせれば、一石二鳥じゃないか。
しめしめとメモをとっていた私の後ろでおじさん幽霊の悲鳴が聞こえる。見ると、幽霊のおせっかいに我慢ならなくなった女スタッフがプロレス技でおじさんを羽交い締めにしている。
こら、大事な商売道具になんてことをするんだ、といいつつ私はギターで曲をつけている…
来週から個展が始まります。
岩熊力也
「暴風雨、洪水、物言わぬ樹木〜存在しない故郷についての絵画〜」
4月16日〜5月3日
4月18日(土)
17:00〜トーク
19:00〜パーティー
遊工房アートスペース
フィンランドの作家の個展と同時開催です。
トークはフィンランド、アイルランドの作家と一緒に行います。
よろしくお願いします。
岩熊力也
2009.03.04 Wednesday
森、ギター、洞穴
地平線まで黒々と森が広がる。
森の中を一本の小道が直線に貫いていて、良く見るとそこには六本の弦が張られ、俯瞰して見るとなるほど巨大なギターのネックであることがわかる。
やがて大地からモコモコと巨大な両手が起き上がり、静かにギターを奏ではじめる。ブルースフレーズが森に染み渡る。
ギターネックをたどって行くと、唐突に急勾配の山が現れ、その山肌を這うように山頂までギターネックが伸びている。遠目にそれは滝の様である。
山頂には小さな洞穴があいていて、中には若い男一人、若い女二人がテーブルをはさんで向かいあい、皆一様に沈んだ表情で黙りこんでいる。
男が口をひらく。
「僕は行くことにしたんだ。また一から始めるんだ。」
女の一人が泣き崩れる。
山頂からの眺めは素晴らしい。遠くに見える湖が、陽の光を浴びて輝いている…
アトリエは桃畑に囲まれていて、最近はその桃の枝を木炭にして、画材としています。
古来日本では桃に魔除けの力を認めていました。
あと一ヶ月もすれば花が咲きはじめます。どピンク一色の景色を目にすれば、今でもまだその力を信じることができますね。
では、今日も頑張りましょう。
岩熊力也
2009.02.26 Thursday
百m走、貧民窟、溶岩の海
私は体育館で直線の百m走に参加させられている。三レーン程しかないのに、十人で走る。出遅れは致命的である。案の定私は出遅れた。前が壁になる。しかもそいつらとても遅い。私は壁をかきわけ、なんとか前に出たところがゴールだった。結果は四位。釈然としない。
釈然としないまま、外に出る。八ヶ岳の裾野あたりの風景に似た、なだらかなスロープの続く町並みが広がる。
山へと延びる一本道を進むと、そこには貧民窟が山襞に身を隠すようにしてあった。ここを幼少の頃、私は訪ねたことがなかったか。。幼なじみが住んでいるのではないか。
幼なじみの家はすぐに見つかった。小さな土産屋を営んでいるようだが、人の気配はない。
体育館へ引き返すと、そこも人影ひとつなくなっている。
窓から景色を眺めていると、ゴーっという地響きと共に、山の方から土石流が砂煙を上げながら町を飲み込んでいく様が目にはいる。そして徐々にこちらに近づいてきているようだ。土石流とみられていたものが、実は溶岩流であるということも解ってきた。
私はいよいよ危ないとおもい、外に出ると、既に辺り一面溶岩の海と化していた。建物も燃えはじめている。慌てて私は屋根に登り、隣にある寺の本堂へと飛び移る。
不思議と境内は静まりかえっていた。
住職が箒で枯葉を集めている。
「なんじゃか、下界が騒がしいのぉ」…
昨日発売の芸術新潮に私の展評が載ったのですが、その今月号の特集が阿修羅。
気になりますね、阿修羅。
最高神に闘いを挑む神なのだが、いつまでも勝つことができない。救いがなく、苦しみが続く。
それであんな神妙な表情なのですね。
世界中の指導者たちには是非、阿修羅詣でをしていただきたい。
因みに、私の乗っているBMX(チャリンコ)の商品名はAshuraです。どうでもいいことですが。
では、ごきげんよう
岩熊力也
2009.02.24 Tuesday
二段ベッド、雪山捜索隊、焚火
駅のプラットフォームにずらっと並ぶ二段ベッド。手すりは木彫りで蛇や虎などが立体的に表現されていて呪術的である。駅は戦争帰りの人々でごったがえしている。重苦しい空気。
私はただ雪山にスキーをしにきただけなのだ。
更衣室でスキーウェアに着替え、さて滑ろうかと表に出ると、何処からか号令がかかる。男たちは一ヶ所に集められ、グループ分けされる。
知らず知らずのうちに私は雪山捜索隊の一員になっているようだ。捜索は数日におよぶという。
駐車場では女たちが焚火を囲んで大きな円陣をくんでいる。車が燃やされている。
私は女の一人に近づき、帰ってくるまで荷物を預かってくれないか、と頼む。女は不思議な笑みを浮かべ、引き受けてくれた。眼はどこか遠くを見ていた。
再び号令がかかる。
私は、出発した…
今月はじめ、祭りに参加するため熊野は新宮に行った際、宿泊したホテルのベッドが二段だった。
中学時代、寮生活をしていたのだが、そこも二段ベッドだった。
18の春、自動車免許をとる為の合宿にいき、そこは一部屋に二段ベッドが八台、知らない男だらけ16人の共同生活を三週間ばかしするはめになった。
20の春、短期のバイトで万座温泉のリゾートホテルに一週間いた。そこの寮は一部屋に四台二段ベッドがあった。とにかく汚くて臭かった。
二段ベッドにいい思い出はあまりない。
岩熊力也
2009.02.15 Sunday
襖、カトリック神父、猛毒
そこは巨大な屋敷だった。襖で仕切られた無数の部屋が広がっていた。
私は自分の部屋に戻れずにいた。襖を開けると似たような部屋が次から次へと現れ、私はあてどなくさまようばかりだった。
ある部屋には洗濯機が置かれていた。スタートボタンを押すが反応がない。そういえば水がひかれてない。天井からちぎれた電話線の様なものがひょろひょろ垂れていて、引っ張ると激しく水が吹き出し、部屋は水浸しになった。
またある部屋には、白人のカトリック神父が呪詛を唱えていた。薄暗い部屋の奥から陰気な眼で私を睨みつけ、じわじわと近づいてきた。私は襖をぴしゃりと閉め、逃げた。
またある部屋は韓国料理屋であった。ここにきて気づいたが、私には連れがいた。私たちはテーブルにつき、料理を頼んだ。
キムチに毒が盛られていた。猛毒に違いなかった。何故なら部屋全体から悪意を感じたからだ。私たち日本人はお呼びでない存在だった。
私たちは部屋を出た。ところが、部屋の外はもはや屋敷の中ではなく、街の只中であった。あてどなくさまよった。私たちはスーパーマーケットを探していた。途中、停電などがあった。
…という文章を自宅のテーブルに座って書いている場面に切り替わる。
隣で父親が何やらイライラしていた…
今年もまた花粉症が始まってしまった。ぼんやりしてしまいます。
2月だというのに気温高すぎです。
まぁ頑張りましょう。
岩熊力也